5 | 210件 | ||
4 | 14件 | ||
3 | 5件 | ||
2 | 4件 | ||
1 | 67件 | ||
合計 | 300件 |
読み | しゃーろっく・ほーむずのぼうけん | |
放送局 | BSプレミアム/BS4K | |
クール | 2021年7月期 | |
期間 | 2021-08-11 ~ 2022-06-01 | |
時間帯 | 水曜日 21:00 | |
出演 |
「這う人」はホームズ物語の中でも異色中の異色作。「悪魔の足」と並び特異な、ファンの評価が決して高くないこの話をよくドラマ化しようと思ったものです。
原作は秘書のベネットが早くからプレスベリ教授の異変に気付いており、ホームズが現地に来た時点で教授が前傾姿勢で両手をぶらぶらさせる変化が示されます。図らずも猿の精神になってしまった教授が小石や枝で犬のロイを挑発して噛まれ、事件・活劇より『自然に反する者が先祖返りする皮肉』がテーマ。
対して本ドラマ版は教授の奇行をクライマックスまで見せず、更に原作に無い「アリス嬢との婚約破棄」「大木で暴れる猿そのものの教授(インパクト大!)」「彼女の部屋へ侵入」を付け加え『ジキルとハイドを思わせるスリラーと悲劇』がテーマ。挑発を無くしロイをアリスの救世主にした展開はとても活劇してますが、彼女との歳の差を気にして薬を接種した教授の動機づけが薄くなってしまいました。
一長一短でどちらが良いとは言えないですね。「人間が正道を踏み外すと動物に戻ってしまう」ホームズの発言で締める結末は同じで、これがこの話の真のテーマでしょう。
原作に登場しないレストレード警部が「六つのナポレオン」以来、久々の登場。それはそれで嬉しいですが、やはり「バスカビル家の犬」に出て欲しかった・・・。
今回はホラーでした。ファーガソン家に招かれたストックトンはかつて吸血鬼と恐れられた先祖の子孫で、むかし村人たちに恨まれて焼き討ちで死んだ祖先の復讐に来たのかと恐れられた。ストックトンが来た時機を合わせるように鍛冶屋のカーターやファーガソンの幼い息子が死ぬ、そしてストックトンまで死ぬ。また並行して吸血鬼事件が起こる。
村の牧師から依頼を受けたホームズとワトソンが謎を解き開かす。真相は鍛冶屋もファーガソンの幼い息子の死も病死でストックトンは事故死だった。残るのは吸血鬼事件の謎だったが、吸血鬼はファーガソンの息子ジャック少年だった。情緒障害と吸血鬼を書いたストックトンの本に洗脳され吸血鬼だと思いこんだ。ホームズに追い詰められたジャックは吸血鬼になりきり自殺する。19世紀の英国の美しい郊外の風景の中で起こるドロドロした恐ろしい怨念の物語に引き込まれた。
『プライオリスクール』もだけど半分血の繋がった弟に嫉妬した兄…若者が最後に死亡する…ドラマ脚本で死なせるのが、なんだか底暗くて、後味が悪い…。💀
別のドラマでドラキュラ役をやってた(未見)というジェレミー氏を意識した演出…ドラキュラの入れ歯? とか、要らなかったと思う。😔
でも演者の皆様は名演だと思う。
ストックトンにまつわるドラマの創作は、角川映画の横溝正史テイストだ…。😱
毎回楽しみに見ています。
ありがとう。
冒頭から心ざわつく女性の悲鳴。松明を手にした村人たちが罵りながら炎を館に投げ込み、館の人影は炎に飲まれてしまう。
大変ショッキングな描写から始まる「サセックスの吸血鬼」ですが、何十年も「ポーの一族」を愛読してきた私にとってはバンパイア伝説にまつわるこのようなシーンは何度も見てきたので、村人の残虐行為にはおびえながらも、目を離せなくなる始まりでした。
それが過去の話であり、主が焼き殺された館の子孫が時を経てこの村にやってきたことから、再び村に不穏な空気が流れ騒動が起きることを憂慮した牧師がホームズに相談に来るという経緯です。
過去に殺された館の主は残虐非道の人物であり村人の恨みを買ったためそういう運命をたどったのですが、同時に吸血鬼の一族であると噂されていました。
そのため村人は吸血鬼伝説とともに伝えられた館の一族への憎悪と警戒の気持ちを一族子孫のストックトンという人物にあからさまに向けてしまいます。
ストックトンの方も教会に行かずつまりキリスト教徒ではなく長年暮らした南米の宗教を信じていると語るものですから、ますます村人は警戒を強め、ストックトンといさかいを起こし罵り合った直後に急死した男が出たためにストックトンを悪魔の手先のように忌み嫌うまでになります。
そんな村人とは違い、ペルーから妻と子を連れ帰ったワトソンの知り合いファーガソンという男はペルーにいたストックトンを妻と話が合うかもしれないと家に招きますがその日にファーガソンの「希望の星」である次男の赤ん坊が突然死するという悲劇が起きます。
客として招かれたストックトンが赤ん坊に触れており、晩餐の時の彼の態度がファーガソンを不快にさせたため、ストックトンの信用は失われ、赤ん坊の死は彼が招いたものと思われてしまうのです。
この生けるドラキュラと周囲から疑われ追い詰められる不気味な存在ストックトンは原作には登場しない人間なのです。
その証拠に彼が一身に受けた敵意から逃れるように馬車を暴走させ死んだあとにも怪事件は続きます。
そして吸血鬼の仕業と疑われる事件さえ起き、村人もファーガソンも死んだストックトンにさえ憎悪を重ね、吸血鬼を滅ぼさんとキリスト教徒とは思えないような行動に出るのです。
しかし吸血鬼などいるはずもなく母を失う不幸に事故で足が不自由になるという不幸が重なり、父の再婚と弟の誕生により、家族の中で孤立を深めてしまったファーガソンの上の息子が作り出した幻でした。
非キリスト教的宗教に詳しく村人には忌み嫌われても異教徒からは愛され異端者の気持ちをつかんでしまったストックトンに成り代わり吸血鬼となろうとし、命を落とす少年がとても哀れです。
宗教画に描かれた巻き毛の天使のような風貌の少年は「ポーの一族」のエドガーを思い起こさせますが、エドガーが望まないヴァンパイアにされてしまい人間にもどりたいと常に思っているのとは反対に彼はヴァンパイアになることで自分にはない力を得ようとしました。
エドガーも彼ジャックも深い孤独の中に生きており、疎外感に苦しむ悲しい目が印象に残りました。
「ポーの一族」が登場してから十年以上後に作られたこのサセックスの吸血鬼はシャーロキアンには不評でも萩尾ファンには理解されると思うのです。
昨日ラジオをつけっぱなしにしていたらラジオ第2から英語で『まだらの紐』が。🐍
16:25からの『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』でした。
15日は第2部となってます。たった5分の番組だけど、聞けて嬉しかったですね。
吸血鬼といえば私は星野之宣の短編漫画『カーミラの永い眠り』ですね。ポーの一族は全く触れたことないですね。読もうかな…。
絵面から滲み出る雰囲気がどうにも馴染めずストーリーに集中できませんでした。
「サセックスの吸血鬼」この話は原作と本ドラマ版で全く筋が違う、と言うより厳密には別作品です。改変と言うより、原作の設定を使い新しい話として制作されたからです(理由は次の補足レビュー参照)。
初見時は本ドラマ版オリジナルキャラクター、ストックトンが出る意味がわからなかったのですが、久しぶりに今回の放送で再見し「存在理由が無いのが彼のアイデンティティかな」と思いました。つまりジャックが犯人なのをカモフラージュする、空っぽの器のような存在。ジャックの動機づけのカリスマとしてだけの為に設定されたのだと考えると納得がいきました。最初から彼自身には意味が無かったのだと。
今回見直して思ったのは、昔の印象以上に作品としてちゃんと作ってあるという事。イギリス中央部コッツウォルズ地方ロケの優しい風景が素晴らしく、横溝正史の昔の因縁話に似ている。「ホームズ」物語というより2時間サスペンス劇場仕立ての吸血鬼伝説として観れば悪くなかったです。
減点した理由の1つは最後が物悲しく後味悪いのと(前に書いたように、暗い影を想起するシーンが増えます)肝心のホームズの推理と観察がほぼ無かった事。もう1つの減点理由はやはり、原作そのままで本ドラマ版を観たかった事です。原作は赤ん坊に嫉妬したジャックが毒を使い、夫を気遣って言えないファーガスン夫人に変わりホームズが真相を言い当てる〝家族の問題と愛情の物語〟で、推理と観察も活かされます。それが観れないのが残念なので、私個人の評価は三つ星にしました。
「サセックスの吸血鬼」補足
本ドラマ版のこの時期、ジェレミー・ブレットの体調や俳優スケジュール、予算問題等で作品が作り辛くなっていた打開策の1つとして、グラナダTVプロデューサーのアイデアでこの回から3話分を長編スペシャルで作る事になりました。しかし残る長編「緋色の研究」「恐怖の谷」は後半外国ロケが必要で、結局〝短編から材を取り原作の筋に縛られず制作する〟形に落ち着きました。サブタイトルも3話とも原題は原作と変えましたが邦題はNHK放送時に原作と同じにしてしまい、ややこしい事になっています。
スペシャル3話の制作方法は三者三様で、原作の筋のままの話も有ります。「サセックスの吸血鬼」の本ドラマ版の場合はファーガスン一家4人と毒物クラーレの設定のみを使い、話は全く新しいオリジナルストーリーです。サブタイトルの原題も「THE LAST VAMPYRE(最後の吸血鬼)」なので、正確には〝原作を改変した話〟でなく〝原作からインスパイアされた別の作品〟です。
ちなみに冒頭のマントと牙を付けたホームズのシーンは70年代末にジェレミーがアメリカの舞台でドラキュラ役で人気を博した事が有り、それを意識しての事と思われます。
番組として模索し直した時期でしたが、私個人的にはこの打開策は残念であり、失敗だったと思います。短編原作はやはり1時間尺のほうが物語のペース配分がしっくり来ます。もちろん、今だから言える事ですが。
民の暮らしを安定すべきその土地のリーダーが冷酷無比であり搾取によって民を泣かせていると
村人には不公平感と憎悪の念が膨らんで危険なガスのようにそこに漂ってしまう。
それが何らかのきっかけで火がつき、反感が爆発し、リーダーへの民衆の攻撃が始まり暴動へと結びつく。
そのことを恐れるため独裁的リーダーは常に庶民を監視し彼らが団結して歯向かってこないように押さえつけるのだ。
「サセックスの吸血鬼」の過去の悲劇は小さな村のものだが、どこにでも起こりうる惨劇の一例。
自分の祖先が村人の憎悪によって殺されたことを知ったストックトンは何を思ったのか。
惨劇の舞台であった廃墟で彼は何を見て感じたのか。
異国の宗教を研究し、本を書き、異国出身のファーガソンの夫人やメイドから初対面で信頼を得てしまった彼のカリスマ性。
孤独な彼は村人に敵意をむき出しにされればされるほど自分を理解してくれる人間を求め、ファーガソンの妻やメイドそして体と心に傷を負った長男ジャックに近づいた。
その時に村人とファーガソンの次男の突然死という不幸な偶然が重ならなければ、ストックトンはここまで危険な人物とはみなされず、死を迎えることもなかっただろう。
ファーガソンは家族の間にひびを入れた人物としてストックトンを遠ざけるくらいで済んだかもしれない。
人は自分の愛するものが自分以外のものに夢中になることを好まない。
同じものを見同じものを愛している間はいいのだが、自分が理解できないものを追うようになった家族や恋人のことを容認できず、その原因になった人や思想を憎むものだ。
ファーガソンが最初は普通の紳士だったのが、ストックトンを憎みだし彼の胸に杭を打つようになるまでの変化が恐ろしい。
父の思いとは裏腹に急速にストックトンに魅せられ彼のようになりたいと熱望し、ストックトンの死後後を追って自らの命を絶ってしまったジャックとの出会いも本当に不幸な縁としか思えない。
彼は母も高い木に登るほどの身軽な体も奪われていてさらに父からの愛情も赤ん坊に奪われたと思い込み、救いを求めていたのだろう。
彼が満ち足りた子供であったならストックトンに魅せられることもなく終わっただろうが、賢い彼はストックトンの中に自分と同じ絶対的な寂しさを感じて激しく彼を求めてしまった。
賢いけれど自分の持つ能力を認めてもらえない鬱屈や挫折に悩み、はたが見たら信じられないような宗教や極端な思想団体にめりこんでいく若者の姿をジャックに見たように思う。
物語の舞台はインフルエンザが猛威を振るった時代。
他者への疑心暗鬼から他国の人間やよそ者に対し、敵意をむき出しにし排除するのが正しいと信じている村人の姿を笑うことも、断罪することもできない。
コロナ禍と戦争におびえる私たちは。
ワトソン役が二人いるの言われるまでわからなかった
ホームズのプライドをかけた恐喝王との戦いが面白かった。ホームズとワトソンの前で恐喝王が恨みを持つ意外な女性に殺される結末が衝撃的でした。ホームズは科学に詳しくこれまでも科学捜査の先がけをやり今回は配管工になりすまし潜入捜査をやり犯罪者を追い詰めるためなら手段を択ばず怪盗ルパンのように巧みに留守宅に忍び込み金庫破りをしてしまうなど何でも出来る完璧な探偵で凄いです。またホームズの無理難題の要求に応える優秀な相棒のワトソンの協力があればこそホームズの活躍が出来ると思います。そんな二人が活躍するハラハラドキドキのミステリーに毎回に引き込まれる。
ミルヴァートンの死体を踏みつける(カタをつける)高貴な女性を演じる女優さんは名探偵ポワロ “もの言えぬ証人” (フォックステリアのボブが可愛い)にも出演。ネットの情報で分かった。ポワロにはハードウィックも出演してて、そういうとこ、なんだか面白い。🌞
雇い主の手紙をメイドが売るとか……恐ろしい。バイトテロ…とは違うか。
ホント、ワトソン役が…やっぱり顔を覚えられなくて困ってしまう。むしろ外国ドラマだからこそ超有名な俳優を使ってほしい。
恐喝の男は笑顔が不気味だった。これまでの犯人の中でも、特に。ホームズとワトソンが犯人のように誤解されたというのがタイトルなんだね。
「犯人は二人」は原作の別の邦題「チャールズ・ミルバートン」のほうが私はしっくり来ます。他にも「恐喝王ミルバートン」という原作邦題も有りますね。
原作の原題は「THE ADVENTURE OF CHARLES AUGUSTUS MILVERTON(チャールズ・ミルバートンの冒険)」で、本ドラマ版は「THE MASTER BLACKMAILER(恐喝王)」に変えられましたが日本放送時は原作邦題「犯人は二人」が採用。複雑です。
前回から始まったスペシャル3作中、「犯人は二人」本ドラマ版の場合は原作の筋のまま、人物が語るだけの部分も拡大して映像化(ドーキング大佐の自殺からレディ・エバがホームズに依頼するまで)する制作方法が取られました。アギーも原作は名前のみ登場で、変装したホームズ=エスコットとの衝撃キスシーンは本ドラマ版オリジナル。
原作の名場面がほぼ映像化され、ロバート・ハーディ(映画ハリー・ポッターシリーズの魔法大臣ファッジ)演じるミルバートンがやや痩せ形な以外、抜け目ない微笑みや眼鏡までシドニー・パジェットの挿絵そっくりで、にやにやしてしまうほど大満足です。
1つだけ不満なのは、原作の最後印象的な〝レストレード警部が221Bに来て犯人の人相を言う場面〟が無い事。「二人目の奴は中背で屈強な体格で四角い顎、太い首、口髭」「ワトスンの人相みたいじゃないか!」が面白くて、「犯人は二人」たる所以なのですが。前半で原作に無いレストレード登場シーンが有るので余計勿体無いんですよね。
そして本ドラマ版のレストレード警部は今回が最後の登場。お疲れ様でした。
はじめに登場した貴婦人は、時を超えて復讐をしたってことなんですか。
お手伝いさんが令嬢の手紙を売ったりして、なんだか身分差があるって、かなり緊張感のある社会なんですね・・
あのブラックメールの男は、警察には捕まらなかったけれど、あんな形で報いを受けたってことですね。
「犯人は二人」というのは原題とは違うと聞いて驚きました。
原題は「チャールズ・ミルヴァートン」なんですね。
恐喝については少し前の放送の「ボスコム渓谷の惨劇」でホームズが殺人よりも許しがたい悪と考えていることが知らされていたのでこの恐喝王との対決は「待ってました」の物語でした。
原作は短編なのに丁寧に長編で描かれるこの物語では恐喝によって不幸になる当事者だけでなくその卑劣な行為の影響が波紋のごとく広がって多くの人たちを震え上がらせ、恐喝のしやすい社会に替えていってしまうことを描いていました。
恐喝王は誰かの秘密を握ることで富を得るだけでなく、上流社会の人たちさえひれ伏させ支配できることの暗い喜びに酔っていたのでしょう。
容赦なく人を痛めつけることで深く恨まれていることもわかっていてだからこそ用心深い彼なのでホームズもてこずります。
心優しき貴族との結婚をぶち壊されそうな女性の名誉を守るべく恐喝王との対決も慎重に進めるため、事を荒立てないように交渉を続けていくのですが、ついに荒っぽい手段に出ざるを得なくなる
ホームズが大変苦戦した案件です。
その最後の荒業に反対しながらも協力することになるワトソンに「君にだから言うけれど、僕はこれまで我ながら極めて優秀な犯罪者にもなれると思っていた」と原作で語っているホームズ。
その彼さえ予測できなかった結末は恐喝という犯罪の根深さとふりまいた毒の強さを語るに余りあるものでした。
恐喝王は倒されてか弱きの女性の名誉は守れたので一件落着には見えても、最初のシーンに登場する男の再登場で我々は安どの気持ちを見失います。
恐喝王ミルバートンが自分の暗い欲望を満たすために作り上げた恐喝システムは当時の世間の闇に暗く深く根を張り、法の網をかいくぐって生き残った恐喝者の手先はまた新たな恐喝王をひそかに待っているとしか思えないラストに震えます。
金を巻き上げれば恐喝だが、そうでなく自分の名誉を守るために批判者の弱みを握り告発を握りつぶす、そのような行為はその社会で権力を持った人物なら容易であり、権力を絶対的なものにしてしまうものだからです。
正しさとは何か、悪との対決はどのようにすべきか、か弱き人を守るためには何が必要かなど根本的な問題は我々にとっても無縁ではありませんので・・・・
卑劣な行為と戦うためには時には法を犯してまでも挑む必要があるというホームズの信念が語られるこのもの語りだからこそ、ホームズは知力を尽くしあらゆる手段を取る。
だからこそ、敵の情報を得るために恐喝王の小間使いの女性と仲良くなってしまったりする。
言ってしまえば結婚詐欺に当たる行為さえやってしまえるホームズはある意味その辺の道徳をやすやすと乗り越えてしまうわけでその辺が彼の魅力なんですが、だまされる小間使いの女性がとても魅力的なので見てる側もめったに体験できないホームズとの急接近の疑似体験ができるお得なお話になっています。
彼女は主人の執事とそれなりにいい仲なのに、彼の粗暴さや単純さを「おばかなんだから」とからかっていて、単にか弱き女性ではなく配管工に化けたホームズに対しても常にリードする立場の賢い女性です。
多少の罪悪感は持ち合わせながらもこのアガサという女性とのお付き合いを楽しんでいるとしか思えないホームズです。
そしてこの物語のヒロイン恐喝王に脅かされながらも結婚の日を待つエヴァという女性は親兄弟を亡くし頼るのは叔母だけの心細い身ながらも先に恐喝王に人生を狂わされた友人に寄り添い、支えようとする心優しき淑女です。
その彼女も過去の交際から恐喝王の餌食とされてしまうのですが、彼女が一人で生きてきたからこその強さとしなやかさを備えており、周りに正しく愛される女性と言いましょうか、勇気をもってホームズを訪ねてくる勇気を備えている。
この見た目だけではない愛されキャラの彼女のことをホームズは自分が利用してしまったアガサとともに「活力のある女性」として評価している。
このドラマの冒頭のボヘミアの醜聞で描かれたように「女性に苦手意識はあるがすべての女性が苦手なのではなく時にはホームズが心惹かれる女性は「賢く自分の運命を自分で切り開ける女性」ということを確認できます。
これは作者ドイルの女性観からくるものかもしれませんが、ホームズが女性嫌いのように見えてそれだけじゃない原作にも書かれたこの「結婚詐欺」とも非難されるエピソードが丁寧に描かれたのは面白い。
私などは脅迫されたエヴァ嬢が侯爵との結婚を受け入れたくらい自分では落ち度がないと思っていられたなら、侯爵にすべてを話して許してもらえばいいのにと思ってしまいますが、当時の結婚観と、私の若い頃の日本でもよく語られたヴァージニティーの重要さを考えればそれが疑われても仕方ない証拠としての手紙の存在はなんとしてでも表に出てはいけなかったのでしょう。
侯爵はいい人なのに・・・では済まされないのでしょうね。
でもホームズがこれまでの輝かしい功績と名誉をすべて失う覚悟で臨んだ対決も記録しないでくれとワトソンに語るくらい葬り去るべきことであったということでしょう。
日頃のシニカルなホームズよりも、小間使いさんと仲良くしている時の、ゆる〜いホームズの方が少し幸せそうに見える(^-^;
ホームズは毎晩悪夢に怯える、地下から這い上がる恐ろしい表情の女性など、それは予知夢で後で現実に起こる。そして街に現われる謎のベールの女性、ある日ホームズはロバート卿から結婚式直後に失踪した花嫁の捜査を依頼される。悪夢から立ち直ったホームズは謎を解明する。
真相はロバート卿が財産目的で最初の妻を殺し二度目の妻は自分の屋敷に監禁した。ベールの女性は監禁された二度目の妻の妹でロバート卿を追い詰めるが使用人に襲われ顔を傷つけられる。失踪した花嫁は死んだはずの夫と再会して暮していた。失踪した花嫁は屋敷に行きロバート卿の過ちを問い詰めるが殺されそうになり駆け付けたホームズとワトソンに助けられる。ホームズは逃げたロバート卿を追いかける
逃げたロバート卿は屋敷の地下に閉じ込めた二番目の妻の7年かけて仕掛けた罠にはまり崩れた柱の下敷きになり死ぬ。その後地下から這い上がる二番目の妻の恐ろしい表情が依然見た夢と同じでホームズは唖然とする。今回はサイコミステリーの趣で引き込まれました。悪夢に怯え落ちぶれるホームズの人間臭い一面を見せて印象に残りました。
依然見た夢→以前見た夢
いろいろ伏線が複雑に絡み合っているので説明するのが難しいドラマだが面白かったです。
地下に閉じ込められた女性が7年間コツコツと復讐する細工をする執念は凄かったです。
まるで巌窟王みたいでした。
オカルト物に堕ちてしまった回。ホームズが完璧な予知夢を見たり……。
コナン・ドイル自身は息子が戦死した後に降霊術にハマったり。他に妖精事件なんてのもあった。
奇術師フーディーニにも呆れられていたドイル。スタッフはそれをオマージュしたのかな?😵💫
手に着けた爪で女性の顔を傷付け猛獣に襲われたと偽装するアイデア。悪趣味〜。ジェイソンか。
また、ホームズが嫌った “グロテスク” を持ち込むとは…。
時代が同じ切り裂きジャック事件は触れられないホームズ物。
映画『SHERLCCK HOLMES MEETS JACK THE RIPPER!』についてアラン・アイルズは著書にて
「バットマンに中毒気味の若い観客に訴えるため、アメリカの配給会社が騒々しく宣伝しすぎた映画」だと……。
それに似てる今作。😫
↑手に付けた爪ではなく、棒の先に付けた猛獣を模した爪だったかな。不快なので2回見たくはない。😵💫
シャーロキアンの自分でも嫌悪感を感じる原作とは何の関係もないグロいだけのオリジナル放送回。こんなのやるなら「五粒のオレンジ種」「黄色い顔」とか他にやる内容があるだろうが。
主人公がどうもイメージとしてあるホームズとかけ離れすぎていて話に集中できん
「未婚の貴族」の物語は原作とはかなりかけ離れていて、そもそもサイモン卿は財産目当てに一番目の妻をすぐ殺してしまったのに、なぜ二番目の妻を七年もの間非道な監禁を続けていたのかの答えが見つからず私も戸惑ってはいます。
でも最後にホームズによって助けられる二番目の妻の壮大な復讐劇ととらえれば、
理解できないこともありません。
殺されるよりひどい獣以下の扱いを受けていた姉は精神を蝕まれそうになりながら生き延びることで復讐の実行を待ち、
姉を探して訪ねた先で当時の上流婦人なら、死を選びかねない傷を顔と心に負っても姉を助けるまでは死ねないと、果敢に行動する妹の存在あってこその復讐の達成だったのです。
もちろんそれは最初はベールで覆われた謎の淑女として登場した
妹がホームズの元にやってきて助けを請うたからなのですが。
冒頭ホームズが不本意に終わった事件解決の余韻でふさぎ込み、
心血を注ぐべき事件が起きず、空しく日々を過ごす憂鬱を
一層暗いものにした不気味な夢が繰り返し描かれ、それがかなりグロい描写なので私もついていけなくなりそうでしたが、
最後まで見てまたもう一度見て見ると、獣以下の監禁状態であった姉の「復讐と生への強い執着」がホームズの精神に時空を越えてテレパシーのごとく作用していたと思われる内容でした。
ホームズの捜査方法は常に科学的論理的であり、膨大なデータが入っている頭脳から
人間の犯罪心理を推理しているわけですが、急速に科学が発展し馬車から自動車へ電報から電話へと移り変わっていく中でも人間の心の奥深さはまだ究明しきれていない訳で、だからこそホームズは不可解な夢に悩まされる。
愛息の死から急に霊の存在を信じたり科学で究明しきれないものの存在を信じるようになってしまったドイルならではエピソードが盛り込まれていると感じます。
「未婚の貴族」原作の別の邦題は「独身の貴族」「花嫁失踪事件」。原作原題は「THE NOBLE BACHELOR(独身の貴族)」で、本ドラマ版の原題は「THE ELIGIBLE BACHELOR(好ましい独身男性)」に変えられましたがNHK放送時に原作邦題から「未婚の貴族」が採用。
最後のスペシャル「未婚の貴族」本ドラマ版の場合は、原作の筋〝失踪したドーラン嬢探し〟にオリジナル要素をかなり加える制作方法が取られ、ほぼ独自の筋と言っていい違う物語に変貌しました。大きな変更点は「原作は清廉潔白なセント・サイモン卿が犯人に」「予知夢に振り回されるホームズの描写」。特に後者は〝犯罪事件が無いと苛立ち〟〝不眠症〟〝夜の霧の街を彷徨う〟ジェレミー・ブレットの病とスタッフの鬱憤が噴出したような、本ドラマ版全エピソード中で最も暗い影を想起させる回です。
私も録画して久々に再見しましたが真ん中辺で停止し、今回の再放送で初めて小休止して続きを観ました。漠然とした「予知夢」を長編枠で引っ張ったため中弛みし、何よりホームズが予知夢を見た結論を最後まで出せないのが残念。ホテルの勘定書からモールトン夫妻を見つけるのは原作通りなので、やはりそのままの筋の短編で見たかった。
原作では未登場のハドスン夫人のホームズを気遣う描写、グラナダTVスタッフのぬかり無い結婚式食事シーンの建物・衣装の豪華絢爛さ、俳優陣の手抜き無しの演技に、私個人の評価は三つ星にしました。
ホームズって科学捜査の先駆けみたいなこともしているけれど、
物語の中には、様々な動物やら、異国のもの、なにやら怪しげな
若返りの薬とか、オカルトっぽいモチーフも出てきて、
その混沌とした感じが現代ドラマには出せない魅力の宝庫。
独特の世界観が時代を超えて人々を惹きつけるのかな。
コナン・ドイルが晩年にオカルトに傾倒したのは事実だが、この作品は原作にない部分をオカルト的にグロく演出する悪趣味がある。シャーロック・ホームズとは縁のないものが多い。
概要、クライン夫人は公爵との結婚に際し付き合っていた男性ダグラスが邪魔になり冷たい仕打ちで捨てる。ダグラスは報復としてクライン夫人の暴露本の原稿を残した後死亡する。実はダグラスの死の真相はクライン夫人が雇ったボクサーからの暴力が原因だった。ホームズは証拠の原稿で迫りクライン夫人と公爵との結婚を破棄させる。ホームズはダグラスの殺人を立証できないとしクライン夫人を見逃がすが。その代わり罪の重さを思い知らせる。クライン夫人は私利私欲や向上心が強くそのために男を貶める女性で怖かった。クライン夫人を追いつめるホームズの迫力に引き込まれました。
これまであんまり悪女っていう感じの人は
登場しなかった気がするんですが、
クライン夫人はしたたかな悪女で、
ホームズとの対決、見応えありました。
亡くなった元カレが哀れ😭💧
ソフィアローレンとかクラウディアカルディナーレのような見事なボディをドレスに包んだクライン夫人を演じたのがボンドガール出身のアランドロンやなんと沢田研二さんとも共演にした女優さんと知り納得でした。
彼女が出てくることでどれだけ多くの男性を泣かしたのか想像できてしまうわけですね。
ドラマでも「永遠と思われたその美しさもいつかは」とか言われているけれど、お年を計算しても十分に美しい方です。
恋の相手の母君であってもおかしくない御年ながら男たちを虜にしていました。
ホームズでは「高名な依頼人」や前回放送の「未婚の貴族」のように女性を欲望のために誘惑しては捨てる悪い男が出てきましたが、女にもそういう人物がいるからご注意をというお話でした。
「人の心をもてあそび恋を遊びととらえ自らの欲を満たすために恋にふける人間は男女関わりなくいるものだから、そういった人物の毒牙にかからぬようにご自分のご子息や息女を守るべき」という忠告のお話が続きました。
クライン夫人の吹き替えは田島令子さん。
美しくも冷たい悪女の魅力は愛をささやく声にもあったのだろうと思わせる。
そして出番は少ないが強烈な印象を残す三破風館の小間使いの女性の声は来宮良子さん。
あの演歌の花道や数々のCMやドラマなどのナレーションなどで活躍した来宮さん。
女性としては希少な渋い声を聴いただけで小間使いの女性の歪んだ裏の顔と腹黒さが際立って見えてくる。
親方の女主人は前回放送の「未婚の貴族」でも貴族の令夫人を演じた女優さんが続けて登場し、吹き替えも同じく麻生美代子さん。
未婚の貴族では一族に迎え入れられるアメリカ娘に対して辛口批評をする夫人だったが今回はそれほど御身分は高くないながらも、ホームズが最初から敬意を十分に払い気遣いを見せるほどのレディである。
ホームズではこのようにホームズがとる態度、口には出さない身のこなしで相手に対する敬意や警戒心が見て取れ、それが依頼人の人柄や現在の心境を表現する手立てと気づかされる。
事件解決のために殺された孫の思い出を語るうちにホームズに心許した夫人は夫とのなれそめと未来を捨てて恋を成就させた若いころのわが身を語り、すっかりホームズとワトソンを味方につけてしまう。
サザエさんの母でもある麻生さんの語りの魅力が生きている。
原作では息子であるイタリアの外交官は女優さんとの年齢差から孫設定になっているが、ホームズを喜ばせたケーキを自ら焼いてもてなすつましさと料理の腕を持つ祖母の元で大切にいつくしまれた青年が妖艶美女に騙され捨てられた悲しみが際立つ。
愛情たっぷりに育った貧しくはない家庭の子女は疑うことをしらず、詐欺師の毒牙に掛かってしまうのが玉に瑕。
それでも鬼と明かしたかつての恋人から受けた傷に苦しみながらも
恨みを抱いたままこの世から去らずに小説にしたためたためにそれが証拠となり、妖艶美女の野望を砕き、残された祖母の老後の助けとなった結末の明るさに少し救われた思いだ。
「三破風館」は恋多く情け薄きイザドラ・クラインが登場(演じるクローディーヌ・オージェは「007サンダーボール作戦」のボンドガール・ドミノ役が有名)。「ソア橋のなぞ」「サセックスの吸血鬼」そして本作と、我の強い英国以外の女性が絡む話は原作の後半に多く、20世紀以降ドイルに心境の変化があったのか興味深いところです。
原作との大きな変更点は「数行語られるだけのラングデール・パイクの登場」と「ワトスンの見せ場を増やすディクシーとの格闘と怪我」。共に原作を膨らませた改変で、前者の「ホームズがパイクの前で女性の行動を言い当てるシーン」は「ギリシャ語通訳のマイクロフトとの推理合戦」を彷彿させ、ミルバートンの名がパイクから飛び出すのにも思わずニヤリ。後者は、ワトスンの台詞も増えた事で話が締まりました。原作未登場のハドスン夫人にも「ディクシーの背中をこづく」「ワトスン負傷を知らせる」シーンが作られ、決め台詞ではないもののホームズの「紹介しよう」も冒頭登場し、いつもの本ドラマ版の姿が戻って来ました。私はそこが一番安心し、嬉しかったです。
原作で最後にホームズがイザドラに釘を刺す「鋭い刃物を振り回せば己も傷つく」がワトスンへの台詞に変わり、私は彼女に忠告してこそ「三破風館」だと思いますけども。原作に無い「時の流れには逆らえんよ」の台詞のほうが、紆余曲折して作って来た本ドラマ版制作陣が一番言いたかった事に聞こえました。
なんかイメージとはだいぶかけ離れている。とくにワトソン。アレ?こんな物語だっけかなというところもある。「名作」とされている作品にはよくある話だね、想像していたのとは違うみたいな。
ワトソンはコナンドイルの写真に似ているなといつも思う。
「瀕死の探偵」は、犯人に自供させるためのホームズの演技でした。三日間、食事抜きでやつれた姿になったのはすごい。
犯人は自己顕示欲が強いタイプで、策士策に溺れて自滅。
殺人犯を追い詰める為なら知恵と体と命を張ったホームズの捨て身の戦法が凄まじかった。財産目的で富豪の銀行家を殺した殺人犯を家の前で罵り怒らせた後、死にそうに見せかけた仮病で殺人犯をホームズの部屋に招いて侮辱されたホームズへの憎しみを煽り殺人の真相を白状させ、予め潜ませた警察に逮捕させた。そのためにホームズは3日間断食してやつれさせてそれに特殊メイクで伝染病と偽って死にそうに見せて殺人犯どころか相棒のワトソンやメイドのハドソンまで騙した、まさに敵を欺くにはまず味方からの策が見事でした。
ホームズの下宿が二階にあるのはあの手狭な下宿の構造上だろうとは思うがやってくる依頼人を観察するにはぴったりなあの窓からの眺め。
いつも通行人たちを観察しているホームズは今回の依頼人の女性が美人だというだけでなくどういった事情を抱えているのかも御見通しだったのか?
彼女の銀行家の夫サベッジは十分な財産があるにも関わらず、素晴らしい詩を書きたいという夢を抱きそのために薬物に手を出してしまういわゆるええとこの坊ちゃんで隙だらけの男性。
妻である女性は彼の弱さをよく理解しているので彼のいとこがよこしまな心で夫に近づいているのもよくわかっている。
これは夫の死後遺産をいとこである医師スミスに奪われた時に「実家には頼れない」と言っていることからもお蚕ぐるみのお嬢様育ちではないことがわかる。
だから彼女は邪念を持ったスミスを常に警戒し、夫に危険が迫っているとホームズを頼ったのに夫は彼の毒牙にかかってしまった。
新型の熱病の研究者でもあるスミスがもっと狡猾で女性に対して自信家であり、サベッジの妻アデレードが世間知らずのお嬢ちゃんであったなら、伝染病への罹患によって急死したいとこの財産と寄る辺を失ったサベッジの妻との両方を手に入れることができたかもしれないが、医師スミスはモテ男ではなくワトソンやホームズをも魅了した美人に対して子供も一緒に彼らの屋敷からすぐに放り出す人間味のない男。
それがアデレードのスミスへの警戒を呼んで夫は殺されたけれど、ホームズを頼るという賢い選択肢につながったのは大変良かった。
銀行家である夫サベッジが薬物に手を出しているという不名誉なことまで告白し、それでも彼を守ろうとした彼女の勇気がスミスの逮捕につながり彼女と子供たちの将来を取り戻すことにつながったのだ。
そういう女性であることをホームズは初対面で見抜いたのであろう。
その彼女の窮地を救わんとする気持ちが入念な計画とホームズの大芝居につながった。
医師スミスに直接非難の言葉を浴びせることで彼に「ホームズをこの世から消さなければ」といせっぱつまった状態にし、医師が犯人である決定的な証拠を手に入れるように仕向けた。
そのうえでワトソンとハドソンさんに対して大芝居をして見せ、その芝居が完全であることを確信したのちにスミス氏にすがるという彼の芝居のうちでも天下一品の芝居をうった。
それに引っかかったスミスは根っからの残虐さから、死に際とみたホームズをいたぶり、ホームズに敗北を認めさせんと自分の犯行を得意げに語ってしまう。
残虐な人間が陥りがちな罠にはまったスミスに振り返って見せるホームズの顔がいい。
自分自身医師であり、優れた歴史小説を書きたいがため、生活のためにホームズを描き始めたドイル自身んついて考えると面白い。
ドイルが書きたかった歴史小説より世間はホームズの続編を熱望しそのためにドイルはホームズを一度死なせているのだから。
イメージとして描いていたものと違っていたのは仕方ないとしても内容はあるきたりで特に真新しいものは感じ取れなかった。当たり前といえば当たり前なのだが、いまひとつ物足りない。
「瀕死の探偵」個人的な話ですが、私がNHK本放送時に唯一録画した回です。あのVHSテープは何処かへいってしまいましたが、遂にレビューが書ける事を嬉しく思います。
この話の本ドラマ版は〝原作の筋のまま、人物が語るだけの部分も拡大して映像化〟つまりスペシャル「犯人は二人」方式で作られ、原作はハドスンさんがワトスンにホームズ重病を伝える場面からです。〝ビクターの屋敷全て〟〝ベーカー街特別探偵団3少年の登場・探索〟は原作記述が無い、グラナダTVスタッフが想像力を膨らませ作ったオリジナルシーンで、妻・アデレイドと子供達やゲットグレーブもオリジナルキャラ。〝冒頭ホームズが2階からアデレイドを観察するシーン〟〝ホームズが屋敷内のカルバートン・スミスに叫ぶシーン〟は本ドラマ版のみとは思えない名シーン。ワトスンは原作は瀕死のホームズを訪ねてから関わりますが、本ドラマ版はビクターの生前から関わり、今回も見せ場が増えました。
「マッチと煙草をもらえれば有難いな」「3日間飲まず食わずはともかく、煙草を吸えないのは実に厳しい試練だったよ!」「役を演じる最良の方法は成り切る事だよ」何度観てもいい、まるで舞台の一幕を眺めるようなこの充実感よ。当時ジェレミー・ブレットは心臓の病が進んでましたが(前述通り「未婚の貴族」辺りから濃いドーランを塗り顔色を隠している)あの頃の私は何も知らなかった・・・。今は瀕死のホームズが実際のジェレミーと重なりますが、何度もVHS再生した喜びはかけがえのない思い出です。
はじめに映ったサイドテーブルの小物(素敵なアンティークの数々)、ランプや部屋の雰囲気がため息ものでした。お屋敷の室内装飾の数々もいいですね。
ゴチャゴチャした下町の空気感もおもしろいですし、見ていて飽きません。
熱病のウイルス?を感染させるっていうのは、恐ろしいし、証明も難しいし、この問題を解決するのは至難の業だったでしょう。あんな捨て身の作戦は、警察にはできない話。
それにしても、よくぞホームズに依頼しておきました。そうでなかったら、追い出されて泣き寝入りになっちゃっていたでしょう。
第1回の “ボヘミアの醜聞” 事件は原作だとホームズが33才。
ジェレミー・ブレットは既に50才を過ぎていた。
結構、残酷な撮影だったんだなと今更思う。
今回のワトソンは演じている役者のスケジュールの都合で休みでした。ホプキンズ警部がコラム教授の秘書殺人事件の捜査に行きずまりホームズに依頼する、秘書は恨みをかうような人物ではなかった。メイドの証言では秘書は死に際にあの女と言い残し金縁の鼻眼鏡を握っていた。真相は教授はロシア人の元改革派で元妻アンナが教授の部屋に忍び込み兄の無実と教授の悪事の証拠を綴った兄の手紙を盗もうとするが秘書に見つかりもみ合ううちに傍にあったナイフで秘書を殺してしまった。アンナは逃げようとしたが金縁の鼻眼鏡をなくし目が見ない錯覚で来た廊下と類似した別な廊下に迷い込み逃げられず本棚裏の秘密の部屋に隠れていた。死に際に秘書が言ったあの女の意味は以前教授の家を訪ねてきたアンナの顔を覚えていたから。ホームズは謎を解明して隠れていたアンナをつきとめる、教授を諫めた目的を果たしたアンナは毒薬で自殺する。教授は恨みをもつものに殺される。今回は秘書の殺害の動機を調べるうちに思わぬ真相が暴かれるまさに瓢箪から駒の顛末が面白かった。
最初からロシアに関係していることを伝えてくる音楽文字民衆の混乱。
舞台はヨーロッパなのだからロシアが絡んでくるのは当たり前ですが。鼻眼鏡は平たい顔族の日本人には定着しなかったようですが彫りの深い欧米人にとっては問題ないのでしょうね。
事件は評判の良い秘書が無残に殺されたことで糸口がつかめなくなりホームズに警察が頼ってくるところから始まります。
温かく迎えられた警部のぐしょぬれの靴はどうもにおっていたようでその辺の描写が面白い。
恨みを晴らしに来た犯人は秘書を殺すつもりはなく眼鏡を失ったことで動転し、もともと屋敷の主人を狙うつもりの興奮状態だったから罪のない秘書に刃を振り下ろしてしまったのです。
殺されて気の毒しきりだった秘書も、妻にと望んでいた女性のことをてんで理解していなかったり、そういう女性がいるのに手を出した可憐な小間使いを見下している独善的な人物とばれとばれてしまうのです。
ホームズにかかっては何事も白日の下にさらされてしまうわけです。
妻にと望んだ女性は婦人参政権運動の活動家であり、その集会に現れたホームズの兄マイクロフトも「女性に参政権などバカげたこと」と言い放ち、その場のご婦人たちからにらまれてしまいます。
秘書を間違って殺してしまった女性は元活動家の妻であり自分もと仲間を売って逃亡した元夫の館の主に復讐に来たのですが、彼に裏切られたせいで多くの同士が殺されたりシベリア送りにされ20年も辛酸をなめたたという告白が今はとても生々しく聞こえます。
戦後シベリアに送られた元日本兵の労苦を思い、女性は投票権すらなかった時代こうして戦った女性たちがいてこそ今の我々あがあるのだと過去と今は確実につながっていることを実感した物語でした。
ホームズのお兄さんは、犯人が極度の近視で、まだ屋敷にいると見抜いていたんですね…このお兄さんとホームズ、兄弟で事件を解決するストーリーをもっと見てみたいです。
コナンドイルは従軍医師であったため、何より裏切りを嫌っていたのだと思う。
裏切られた人物は何年何十年かけても復讐を実行する。
それが殺人であっても防ぐまではしない、復讐を遂げることを推しまではしないホームズ。
そこが相棒の杉下右京とは決定的に違う点である。
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